関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

山の日イベント パノラマトレッキング(後編)

山の日イベント パノラマトレッキング(後編)

2025年12月25日
富士五湖 半田尚人
こんにちは!富士五湖管理官事務所の半田です。
2回にわたってお届けしている 11月23日のイベントの模様ですが、前編はもうご覧頂けたでしょうか?
山の日イベント パノラマトレッキング(前編)
 
後編は精進パノラマ台から中ノ倉峠を目指しての稜線歩きの途中からお届けします。
最後までお付き合い頂ければと思います。

五感を研ぎ澄まして

精進パノラマ台を出発して1時間ほど歩いた辺りで、ルート脇に平坦な樹林の広場がある場所までやって来ました。ちょうど中間地点なので、ここで長めの休憩を兼ねて2つのプログラムを行いました。
1つ目は「クワイエット・タイム」。落ち葉が敷き詰められた地面に腰を下ろし、3分間、静かに目を閉じます。どんな音が聞こえるでしょう?風に揺れる枯れ葉の音。野鳥が地面の虫を探してカサコソと動く音。五感を研ぎ澄まして自然を感じ取ります。仕事や学校での慌ただしい日常ではなかなか感じることのできない感覚です。
落ち葉の地面に腰掛けて目を閉じてみよう。
静寂の中で耳を澄ますと何が聞こえる?

私の木

続いてのプログラムは「私の木」。2人1組で行います。片方が目隠しをし、もう片方が”お題の木”を決めてゆっくりと誘導します。出発前に目隠しをした人に3回転ほどしてもらい方向感覚を無くすのを忘れずに。”お題の木”に辿り着いたら、目隠しのままその木を全身で覚えてもらいます。樹皮の肌触り、枝が生えている高さ、周りに他の木があるか無いか、などなど。覚えたら、再び目隠しのまま誘導し、離れた場所に。ここで目隠しを取ってもらい、いざ探索開始。先ほど全身で覚えた木はどこにあるでしょうか?
①目隠しをした相手を”お題”の木に誘導
②”お題”の木を全身で覚えます
③”お題”の木から離れた所で目隠しを解きます。さぁ、”お題”の木はどれでしょう?
④正解はこの木です。
山の中を歩いていても目に映る木々たちは単なる風景の一部であり、林の中のただの一本にしか感じられませんが、こうやって一本一本の木の樹皮の肌触りの違いなどに注目すると、木々それぞれに個性があり表情があることに気付かされます。自然を楽しく学び、体感する素敵なプログラムです。
ガイドツアーにも様々なスタイルがありますが、一方的に知識を聞くだけでなく、個人で行く山登りではなかなか味わうことのできない体験を通して、自然と触れ親しむツアーはより国立公園の魅力が伝わり、学びも多いので、とてもオススメです。
さぁ、休憩も終わり。再び中ノ倉を目指してトレッキングを続けましょう。

旧千円札に描かれた絶景

トレッキングも後半になって来ると、参加者同士も仲良くなって話も弾みます。落ち葉を踏みしめながら晩秋の稜線を進みます。
落ち葉を踏みしめながらトレッキング
後半は参加者同士、和気あいあいと話も弾む
今回のトレッキングの目的地である中ノ倉峠の展望デッキに辿り着きました。ここ中ノ倉峠も富士山のある風景100選に選出されています。
もし、お手持ちの財布の中に旧千円札があったら、ぜひ取り出して裏面の図柄と見比べてみて下さい。ここ中ノ倉峠は富士山を愛した写真家 岡田紅葉の代表作『湖畔の春』を撮影し、旧千円札の図柄は、その写真が元絵となっています。お札に描かれているような 逆さ富士とまではなりませんでしたが、穏やかで美しいこの情景は時を経た今でも訪れる人々の心を癒やしてくれます。
岡田紅葉も愛した中ノ倉峠からの富士山の絶景

竜神伝説

皆さんは、ここ本栖湖にまつわる竜神伝説をご存知ですか?
大昔、富士五湖のうちの山中湖を除く四湖は、広大な一つの湖で古剗の海(こせのうみ)と呼ばれていました。ある日、突然、朝もやに包まれた湖から竜神が現れ、「近いうちに富士のお山が噴火する」と告げて、小富士(現在の竜ヶ岳)の山頂に登って行きました。それを聞き、村人は避難して助かったという言い伝えがあります。(諸説あり) 毎年8月3日には本栖湖神湖祭が開催され、夏の夜空を花火が彩ります。
季節を変えてもまた訪れてみたいですよね。
解説を聞きながら富士山を眺める参加者の皆さん
鮮やかな紅葉の中、下山

楽しい想い出を胸に下山

さて、楽しいトレッキングの旅も終わり、鮮やかな紅葉の中、本栖湖畔に下山します。
無事下山。精進湖・河口湖の集合場所まで戻るバスの中、1日を振返りながら、クロージングが行われました。
中ノ倉に無事下山
精進湖 他手合浜に戻るバスの中
ツアーイベントの様子を2回に渡ってご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? トレッキングの楽しさはもとより、個人山行ではなかなか得られない「学び」や味わえない「体験」ができるネイチャーガイドとの山旅は満足度を一段と高め、訪問した地域をより満喫できるのでお薦めだとあらためて感じました。
また、富士山麓だと都心から近く日帰りで行ける圏内にあるので、トレッキングだけを楽しんで帰ってしまう人が多いですが、トレッキングの前や後に1日足して ”滞在” することで、より広くその地を知ることができるので、そのような旅のあり方も、今後増えたら良いなと思いました。
 
 
富士山の周辺には、富士山を間近に眺めながらトレッキングできるルートが数多くあります。来年、富士登山をしようという人には、良い体力づくりになりますし、富士山に登らなくても富士山を感じ、魅力に触れることができるので、とてもお薦めです。ぜひ、また富士山麓を満喫しに訪れて下さい!
富士山と青木ヶ原樹海の成り立ちを学ぶ
ひとくちメモ
富士山撮影に生涯を捧げた昭和を代表する写真家 岡田紅葉 の生誕130周年を記念して忍野にある岡田紅陽写真美術館では、現在、企画展『富士とうみ』が開催中。『湖畔の春』も展示されています。
岡田紅葉写真美術館 企画展『富士とうみ』 R7.12.10 ~ R8.1.18 (企画展の観覧は無料)