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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

2025年トキ放鳥の振り返り ~その後~ 、いよいよ本州放鳥へ!

2025年12月24日
佐渡 児玉 恵梨
 みなさん、こんにちは。
 鳥好きな佐渡自然保護官事務所の児玉です。

 今年も残すところあとわずかとなりました。
 新年を迎える前に2025年のトキ放鳥を振り返りたいと思います。

~ 第32回トキ放鳥 ~

 初夏に実施した第32回トキ放鳥では、「ハードリリース方式*1」および「ソフトリリース方式*2」によって合計9羽のトキを放鳥しました。
〇ハードリリース方式による4羽のトキ放鳥
 5月29日に、小佐渡東部に位置する両津地区の「椎泊」で実施されました。 小佐渡東部は日本産トキが最後まで生息していた地域で、今でも多様な生物が生息し自然豊かな環境が残っている場所です。
 来年閉校を迎える「日本一のトキの学校」である行谷小学校及び、地元の河崎小学校の児童や椎泊地域住民ら約80名が見守る中、小学校や地域の代表者9名により4羽のトキが放鳥されました。
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▲小学校児童代表によるトキ放鳥
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▲飛翔する放鳥トキ
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▲順化訓練の説明を受ける児童たち
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▲集合写真
〇ソフトリリース方式による5羽のトキ放鳥
 順化ケージに残っていた5羽について、6月4日から放鳥を開始し、その日に1羽、5日に2羽、最後の2羽は7日に全羽無事に飛び立っていきました。
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▲飛翔する放鳥トキ
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▲順化ケージから飛び立つ様子
※1 ハードリリース方式:順化訓練後のトキを放鳥箱に入れて放鳥場所に移動し、直ちに放鳥する方式で、既存の群れサイズの拡大とトキの分布拡大を促すことを目的としています。
※2 ソフトリリース方式:順化ケージもしくは放鳥場所に設置した仮設ケージ(順化訓練後に一定期間飼育)の放鳥口を開放しておき、トキ自身のタイミングで放鳥する方式で、分散抑制による放鳥場所周辺での群れ形成を目的としています。
〇放鳥された個体の紹介
 元アクティブ・レンジャーで現在はトキの飼育に携わっている方が、個体ごとの紹介資料を作成してくれました。
トキへの愛情が伝わってくる力作をご覧ください!
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▲第32回放鳥個体の紹介

~ 放鳥トキ ~ その後 ~

 放鳥したトキたちは、野外の先輩トキたちと合流し、一緒にねぐらで羽繕いしたり、悠々と飛翔したり、採餌したりする姿が確認されています。
時には単独で行動する姿も見かけられ、日々先輩トキたちから野外で生きる術を学びながら、逞しく成長している様です。
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▲羽繕いするNo.557(右から2番目)
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▲飛翔するNo.562
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▲探餌するNo.560
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▲木にとまるNo.563

~ 来年いよいよ初の本州放鳥へ ~

 
 2008年に新潟県佐渡市で始まったトキの放鳥は、本州での定着と生息拡大を目指すため、令和8年から本州でも実施されます。
 本州で初めての放鳥が行われる場所は、石川県羽咋市に決定しました。
石川県は本州のトキが最後まで生息していた場所でもあり、再び石川の空にトキが舞う日が待ち遠しいです。

~ おわりに ~

 トキ保護増殖事業は次のステージに進み、トキにとっても私たち環境省にとっても新たな挑戦が始まります。
 これまで、佐渡では多くの人の協力のもとトキの野生復帰が進み、トキ個体数も順調に増えてきましたが、本州放鳥という新しい試みが始まることに加え、佐渡の生息環境や個体数の維持など課題は多くあり、トキの野生復帰は、まだまだ始まったばかりなのだと感じています。
 私たちアクティブ・レンジャーも、日々のモニタリング調査や普及啓発活動を通して、トキの野生復帰に取り組んでまいりますので、引き続き、みなさまのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

まずは、石川県での放鳥が無事に成功するよう応援していただけると幸いです。

そして、本州の空にトキが舞い、定着する日を楽しみにしていてください!