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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

学びの場と、新しい生息地の話:オガサワラハンミョウをめぐる2日間

2025年12月26日
小笠原 河村雅史
環境省小笠原自然保護官事務所の河村です。
今回は、オガサワラハンミョウに関する2つの業務についてご紹介します。

12/17 小笠原小学校のハンミョウ授業

この日は、例年行っている小笠原小学校3年生向けの「ハンミョウ授業」があり、生徒の皆さんが小笠原世界遺産センターに来てくれました。
理科の授業で昆虫の体のつくりを学習しているそうですが、今回は環境省が保護増殖事業を行っている希少昆虫「オガサワラハンミョウ」にフォーカスし、学びを深めてもらいました。

前半は、ハンミョウの特徴やライフサイクル、生息環境、そしてオガサワラハンミョウがなぜ希少になり、存続が危ぶまれているのかについてお話ししました。
皆さん、たくさんリアクションを返しながら、授業を聞いてくれました。
授業風景
後半は2グループに分かれて、2つのプログラムを体験しました。
1つ目は、オガサワラハンミョウを飼育している保護増殖室の見学です。翌日に幼虫を野生生息地がある兄島へ移殖する予定があったため、飼育箱の巣穴から「こより」を使って幼虫を取り出す、通称「釣り」の作業風景を見てもらいました。

もう1つのグループでは、私がアクティブ・レンジャーとして関わってきた2つの調査について紹介しました。
1つは、長時間撮影カメラを用いた幼虫の生態や餌資源生物の調査、もう1つは、夜行性昆虫も多い兄島の裸地(植生が少なく、岩、砂などの露出した場所)で、ハンミョウの餌となる小昆虫の分布を調べる夜間昆虫相調査です。
 
裸地
授業の最後には、先生から「今日の授業で一番驚いたことは何ですか?」という問いかけがあり、多くの方が手を挙げて発表してくれました。

講師として小笠原小学校や小笠原高校で毎年行っている授業も、今年度はこのオガサワラハンミョウの授業が最後となりました。小笠原で育つ子どもたちに、環境省の取り組みや自然環境行政を身近に感じてもらうことは、とても意義のある機会だと改めて感じました。

12/18 兄島での幼虫移殖

翌日は、オガサワラハンミョウの幼虫移殖のため、兄島へ向かいました。
父島から船で渡り、幼虫を移殖する裸地まで山道を歩きます。

今回移殖した場所は、オガサワラハンミョウが生息する兄島の中でも過去に生息が確認されていない地点です。今年度までの準備期間には、外来樹木の駆除や、幼虫の生息に適した土壌環境を維持するための土留めなどの整備作業を行ってきました。私自身もその裸地整備に参加してきたため、自分たちが整備した場所が、新たな生息地の一つとしてスタートすることに、強い期待を感じました。

裸地に到着後、ドリルで土に巣穴を開け、麦ストローに入れて運んできた幼虫を、1つの穴に1匹ずつ入れていきます。その後、すぐに穴から出てしまった個体がいないか、アリなどに襲われていないかを確認し、作業は終了です。
幼虫を移殖する穴を開けたところ
幼虫は麦ストロー、試験管に入れて運ぶ
幼虫を一匹ずつ移殖していく
今後、定着して順調に成長が進むと、早い個体では来年の秋に成虫として姿を現します。

おわりに

オガサワラハンミョウの保護増殖は、まだまだ長い取り組みになるかもしれません。
地元の皆さんに環境省の取り組みを知っていただくこと、そして現地での作業を着実に積み重ねていくことが、将来につながると考えています。
これからも、オガサワラハンミョウが兄島で生息し続けられるよう、取り組みを進めていきたいと思います。
授業の最後には、先生から「今日の授業で一番驚いたことは何ですか?」という問いかけがあり、多くの方が手を挙げて発表してくれました。

講師として小笠原小学校や小笠原高校で毎年行っている授業も、今年度はこのオガサワラハンミョウの授業が最後となりました。小笠原で育つ子どもたちに、環境省の取り組みや自然環境行政を身近に感じてもらうことは、とても意義のある機会だと改めて感じました。

小笠原世界遺産センター公式Instagram

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